百武日記

自信がない人が自信を持って生きるためにはどうすればよいか。日々考えたこと、学んだことを記録し、自分の武器にする。

竹村健一のテニスコーチ 「逆算力 (高岡浩三・おちまさと)」

ネスレ日本のCEOの高岡浩三氏は、大学時代にテニスのコーチのバイトをしていた。

ある日、生徒からの紹介で、評論家の竹村健一氏をコーチすることになった。

竹村氏はテニスの初心者である。テニスラケットも買ったばかり。

普通なら、まずグリップを教えて、球をこちらから軽く出して打ってもらう

「球出し」という練習から始めるはずだった。

 

ところが竹村氏は全く普通の練習と異なる要望をしてきた。

テニスコートを3面借り切って、

「球出しはいらない。ラリーをしてくれ」と言ってきたのである。

しかも「1歩か2歩動いて、フォアハンドで打てるところに返して欲しい。

俺はこの3面の中でとりあえずネットだけは越す」とのことだった。

だから3面借りていたのである。

 

実はテニスの球出しという練習では、実践のような生きた球ではなく、

打ちやすい球を打つことになる。

だから球出しで100%返せるようになったとしても、

生きた球を打たなければならないラリーはできるようにならないのだ。

 

英会話学校においても、学校のネイティブの先生とは話せても、

実際の街のネイティブと話そうとするとうまくいかないことがある。

これも英会話学校のネイティブが生徒にわかりやすいような単語を使っていたり、

こちらの英語が下手でも先生が意味を汲み取ってくれるからである。

要は、こちらの聞き取りやすい英語や、打ち返しやすい球で練習しても

実践向きではないことがある。

竹村氏は、最初から実践で打ち返せるような練習を考えて要望してきたのだ。

 

著者はこの竹村氏の練習方法に衝撃を受けた。

実は、まず球出しから練習するのは、長く生徒にいてもらいたいという

テニススクールの事情から行われているらしい。

著者がテニスのコーチをやって初めてわかったことだ。

だが、竹村氏はこれまでテニスをやったことがないのに

このテニスの練習の本質を見抜いていた。

 

竹村氏はアコーディオンやピアノを演奏できる。

それも独学で習得したにも関わらず、かなりの腕前だ。

テニスもあっという間にうまくなった。

おそらく竹村氏は、何事も5分の1、10分の1の時間で上手くなりたいという

意識があって、そのためにはどうすればいいかを一生懸命考えているのだ。

 

竹村氏の本の中に、著者が印象を受けた言葉がある。

「全員一致ならやめてしまえ」という言葉である。

全員が賛成するようなものは成功しない、

これまでの常識やルールを超えず、新しいものを生み出さない。

要するに人と同じことをやってはダメだ、ということだ。

限られた時間でうまくなるためには、人とは違う方法をとらないといけない。

 

もちろん何かを習得するときには基礎が大事である。

ただ、なぜ基礎が大事かというと、うまくなるのに最も効率的だからだ。

逆に言えば、うまくなるのにもっと効率的な方法があれば、

基礎のやりかた自体を変えてしまってもいいのではないか。

最短でうまくなるかどうか、で考えたときに

従来の基礎のやり方でよければそのままやればいいし、

もっと効率的なやり方があればそのやり方をすればいい。

 最初から基本を無視すればいい、というわけではなく

最短の時間で最大の効果を上げるにはどうすればいいのかを

一生懸命考えることが重要だ。

そうすることで自信につながるかもしれない。

 

本日の武器

「人の5分の1、10分の1の時間でうまくなるにはどうすればいいか一生懸命考える」