失う練習 「恐れない技術(桜井章一)」
「○○をゲットした」と若者が言うのを耳にするとき、
著者の頭には、あるフレーズが思い浮かぶという。
それは「得たものは、必ず失う」というものだ。
これはどんな時代でも、どんな人物にも当てはまる言葉である。
多くのものを得たであろう権力者でも、結局は衰退の憂き目にあう。
一生安泰だと貯めこんだ財産も、死んでしまえば子どもたちに分けられる。
広いお屋敷だったところが、主人が亡くなって建売住宅地になるのも珍しくない。
もちろん、失うのは土地や財産だけではない。
子どもたちは独立して去っていく。
若さにあふれた美貌も年老いて失われる。
体をどんなに鍛えていても、いつかは土に還る。
どんなにたくさんのものを得たり、所有したりしたところで
人は死によって全てを失う運命にある。
言い換えれば、人生は「得る」ことより「失う」ことのほうが自然だということだ。
著者は、「得る」ために躍起になるよりも、
「失う」ことを恐れない練習をすることを勧めている。
何か大事なものを失うことに対して、人は強い恐れを抱く。
突然財産を失う、仕事を失う、故郷を失う、健康を失う、生きる希望を失う・・
突然大事なものを失った時に、人は失ったものの重さに耐えかねて嘆き悲しむ。
だからこそ、失うことに対してのシミュレーションをしておくことは大事である。
預金通帳の残高がなくなったとしたらどうするか。
ひょっとしたら小銭でも大切にするかもしれない。
無駄遣いもなくなり、新たに預金を始めるかもしれない。
リストラに遭ったらどうするかを考えておけば、
今日から次の収入源を考えるだろうし、スキルアップにも励むかもしれない。
家族すら失うものだと考えれば、自然と人に優しくなれるだろう。
わが子も失うものだと考えれば、その笑顔が見られるだけでも嬉しくなるだろう。
やたらと夢や希望を持つよりも、今の状態はいつまでも続かないということを
考えてみることは大事なことだ。
明日はどうなるかわからない時代だからこそ、
何かを失ったとしてもやっていける人が生き残る。
失うことを恐れない人は、極まれば金も名誉も執着せず、
自分の命すら失うことを恐れない。
この感覚を「捨て身」という。
捨て身になって腹をくくれば、人生で恐れるものはない。
なまじ得よう、持とうとするから失うことが怖くなる。
失うことを恐れない、「失うものは何もない」と心に決めると強さが出てくる。
いつ失ってもいいように練習しておくこと。
そうすることで自信につながるかもしれない。
本日の武器「失うことを恐れなくていいようにする」