大きさを固定されたパイを考えるな 「ハーバード流NOと言わせない交渉術 (W・ユーリー)」
交渉相手の求めていることのために、自分自身の利害を犠牲にしないといけない。
そんな考えを著者は「大きさを固定されたパイ」と呼ぶ。
相手に多く分け与えれば、それだけ自分の取り分が減ってしまうという考え方だ。
だが、それは明らかに考え違いである。
そのパイを大きく膨らませれば解決するからだ。
自分の取り分を犠牲にすることなく、相手に多く分け与えることができる。
さらには、自分の取り分をもっと多くすることだってできる。
パイを大きく膨らませる一番の方法は、「低価格・高利益」の取引を図ることだ。
こちらが不利になることなく、相手に有益になるような条件や、
逆に相手が不利になるわけではなく、自分にとって有利な条件を探し出す。
あるアメリカ人がモスクワまで出張した時、
空港からホテルまでタクシーを使おうとした。
ところがどんなに交渉しても、タクシー料金は「40ルーブルです」といわれる。
彼にとっては高い料金だった。
そこで彼は空港に引き返し、20ドルでウォッカを買った。
タクシー運転手に料金代わりにウォッカをやると提示すると、相手は喜んで快諾した。
当時のロシア人にとってそのウォッカは、街の酒場で手に入れるには、
4時間も行列を作って待たなければならない代物で、しかも高価だったからだ。
ウォッカはそのアメリカ人にとって「低価格」で、運転手にとって「高利益」だった。
そして、運転手にとってタクシーをホテルまで走らせるのは「低価格」で、
そのアメリカ人にとっては「高利益」だったのだ。
自分を犠牲にすること前提の考えは脇においたほうがよい。
まず考えるべきは、「AかBか」ではなく「AもBも」だ。
少ないパイを奪い合うよりも、パイそのものを大きくできないか。
どちらかが損をするのではなく、どちらも得をして損をしない方法はないか。
先にそれを考える習慣ができれば自信につながるかもしれない。
本日の武器「まず、パイを大きくする」