百武日記

自信がない人が自信を持って生きるためにはどうすればよいか。日々考えたこと、学んだことを記録し、自分の武器にする。

知る 「その島のひとたちは、ひとの話をきかない-精神科医、「自殺希少地域」を行く-(森川すいめい)」

著者がある地域の特養(特別養護老人ホーム)に見学に行ったときのこと。

地元以外で働いた経験を持つ、ある職員が

「ここの特養のひとたちは元気だ」と言ってたという。

この施設の援護が特別に上手なわけではない。

どこでも見るような普通の対応だ。

違う点は、誰かが大きな声で歌い始めても

あまり気にされないということだ。

むしろ、周りの人も歌い始める。とにかく明るい。

 

特養の精神科医は、抗精神病薬を処方することが多い。

しかし、この施設では抗精神病薬を飲む高齢者はゼロだ。

介護の方法は他の施設とあまり変わらないのに、

他の施設みたいに薬でコントロールされている人は少ないのである。

何がポイントなのか。

施設の看護婦さんと話しているうちに、著者は答えを見つけたという。

 

特養の中にいる人達は、全員、誰がどこに住んでいていどういう人生を

過ごしてきたかがよく把握されていた。

他の特養だと病歴はあっても生活歴は記録されていない。

その人がどういう人生を過ごしてきて、何に価値をもっていて、

これからどのように生きたいのかを知っている職員が少ない。

援助という仕事は激務だ。

忙しくて、ひとりひとりの人生の話を聞く時間がとれない。

 

しかし、この地域の特養では、互いのことをよく理解しあえていた。

そういった環境では、人間関係が良好になる。

精神疾患が人間関係の中で発症するとしたら、

この特養ではほとんど起こらないであろう。

1人の老人が大声をあげたとしても、

どうしてその老人が大声をあげたのかを知っている人がいる。

だから大声をあげても気にされない。

ありのままの自分で生きることが許される。

抗精神病薬が必要な場面は自ずとなくなる。

 

良い人間関係は、お互いのことをよく知ることから始まる。

お互いの良いところも悪いところもよく知っている。

どうしてそういう行動をとるのか、どうして悲しむのかを知っている。

それらを病気のせいにしないで人間関係で対処する。

理由のわからない行動を薬で抑えることはしない。

寛容的な人間関係こそが薬になるのだ。

お互いによくしっているからこそ、寛容になれるのだ。

 

どんな人生を歩んできて、どんな考えで生きていて、

これからどのようにしていきたいのか。

相手に興味を持ってそういったことを知ろうとしているだろうか。

また、自分のことについて相手に知ってもらおうとしているだろうか。

そうすることで自信につながるかもしれない。

 

本日の武器「自分の人生観を知ってもらい、相手の人生観を知る」