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百武日記

自信がない人が自信を持って生きるためにはどうすればよいか。日々考えたこと、学んだことを記録し、自分の武器にする。

優等生が好かれない理由 「人間を磨く 人間関係が好転するこころの技法(田坂広志)」

著者が、放射線医学を学ぶために医学部の研究室で学んでいたときのこと。

この医学部で師事した教授は、とても厳しい指導をしていた。

ゼミでの発表で話が分かりにくければ「やめなさい!」と

直ちに発表を中止させられた。

また、いい加減なレポートを書こうものなら、

「こんなもの読めるか!」と投げつけられた。

 

非常に厳しい人だったが、著者にとっては、今日の自分があるのは

この教授の厳しい指導があったからだと感謝しているという。

その中でも、最も心に残っている指導が次のものである。

 

ある日、研究の必要から放射性物質を用いた実験を行うことになった。

教授は著者を呼び出してこう告げた。

「君は来週から実験をやるそうだな。

私が実験の方法を見てあげるから、

明日自分の前でその実験の手順をやってみなさい」

 

この瞬間、「ああ実験の手順について厳しい指導を受けるな・・」と感じた著者は

すぐにK助手のところに行き、この実験の手順について

手取り足取り細かく教えてもらった。

 

翌日Y教授が実験室に来た。

著者は難しい実験の手順を、一つ一つ丁寧に進めていった。

難しい操作の時には、「安全ピペット、目の位置確認!」など

声に出しながら実験を進めた。

教授は終始厳しい表情で著者の実験を見ていたが、

「待ちなさい!その手順は違う!」といった指導は最後まで受けなかった。

 

全てが終わったとき、教授は憮然として著者に一言だけ聞いた。

「誰に教わった・・」

「K助手に教わりました」

その会話だけで教授は実験室を出て行った。

 

著者は一度も厳しい指導を受けなかったことに満足していた。

その後も研究室では「優等生」として、

教授から叱責を受けずに過ごしてきた。

そして、この研究室での学びを終え、去る日がやってきた。

研究室の机を片付け、メンバーに挨拶をし、最後にY教授の部屋に伺った。

 

教授室で最後の感謝の挨拶を述べると、

教授も「君もよく頑張ったな。君は優秀だな」といった世辞を述べてくれたが、

最後に、「しかしね・・」と続け、一言著者の目を見て言った。

それは、静かな一言であり、その後の著者の人生に大きな影響を与えた。

 

「君はね・・可愛げがないんだよ」

 

著者が社会に出て働き始め、様々な人間関係の困難に直面したとき

いつもこの言葉が救ってくれたという。

 

人間であれば、誰でも、非があり、欠点があり、未熟さがある。

それにもかかわらず「自分には非が無い」「自分には欠点が無い」と思い込み、

それを密かに誇っている奢りや傲慢さをY教授は感じていた。

だから「君は可愛げがない」という言葉で指摘したのだ。

 

「自分に非はない」という意識は「自分は優秀だ」という優等生意識につながる。

世の中を見渡すと、それほど大きな欠点も無いのに、

周りから好かれない人がいる。ときに、嫌われる人物がいる。

こうした人物は、密やかな奢りと傲慢さを伴った「優等生意識」で

人を遠ざけているのである。

 

人は非があり、欠点があり、未熟であるから、周りの人の心が離れるのではない。

人は、自分の非を認めず、欠点を認めず、

自分には非が無い、欠点が無いと思い込むとき、

周りの人の心は離れていく。

自分の不完璧さを認めること。

そうすることで自信につながるかもしれない。

 

本日の武器「自分の非や欠点を認める」