ギャンブルをしないと危険 「ビジネスに活かすギャンブルの鉄則 (谷岡一郎)」
バブル時代、著者の知り合いの投機家は、ホテルやリゾート産業の大規模開発に
投資して莫大な財産を築いた。銀行もどんどん資金を提供し続けた。
毎年、資産は倍々ゲームで増えていった。
ある日、一部の投資が計画通りに進まなくなった。彼はテコ入れのために
より大きな資金を投入した。しかし、その頃から不動産の値上がりが止まり、
銀行が思うように資金を貸してくれなくなった。
そこで、残りの順調な計画を全て担保にして資金繰りをし、
また、知り合いの政治家を説得して銀行を説得して
一発逆転の海外プロジェクトを立ち上げ、勝負に出た。
だが、バブルははじけ、大きな借金だけが残ってしまった。
ビジネスと、ギャンブルは本質的に同じだと著者は言う。
いろいろ根拠はあるのだが、簡単に言うとさらなるリターンを求めて投資する点と、
不確定要素が多い点で同じだ、という。
ということは、ギャンブルで失敗するパターンは、ビジネスでも当てはまる。
ギャンブルの本質を理解すると、ビジネスでも役に立つ。
世の中にはバブルの紳士のように、ギャンブルを知らずに
(本人がギャンブルだと認識せずに)ギャンブルをする人がいる。
一方で、ちゃんとギャンブルの本質を理解した上で行う人もいる。
もちろん、まったくプレイしない人もいる。
英国の経済学者、ショーン・マクブロウが提唱した
「四タイプの経済プレイヤー」という分類がある。
これを著者はギャンブルに当てはめて、人を4タイプに分類する。
行動の基準として「ギャンブルの本質をりかいしている」「理解していない」
そしてギャンブルを「する」「しない」で分ける。
つまり、下記の4タイプである。
①ギャンブルの本質を理解していて、ギャンブルをする人・・・起業家
②ギャンブルの本質を理解してないのに、ギャンブルをする人・・・空想的泡沫人
③ギャンブルの本質を理解していて、ギャンブルをしない人・・・官僚
④ギャンブルの本質を理解してなくて、ギャンブルをしない人・・・倫理闘士/宗教家
※この場合の「ギャンブルをする」とは、賭け事だけでなく、
ギャンブル的な要素のある行動全般を指す
この四タイプの中で、個人レベルで最も危険なのは、
②の空想的泡沫人である。
それは、合理的概念を理解せずに、ギャンブルをするからだ。
ギャンブルをするなら、インスピレーションや本能、感情、根拠の無い思い込みに
決して頼ってはならないのだという。
だから著者は、合理的思考をせずに、感情の赴くまま賭けていく人は
真のギャンブラーではないと主張する。
そして、個人レベルではなく、国家、もいくは自治体以上のレベルになると
一番危険なのは、チャレンジするべきタイミングでチャレンジしなくなること、
すなわち「官僚」的な思考が全体を支配することである。
この状態では、必要な投資や技術革新など新たなチャレンジが滞ってしまうのだ。
つまり、組織においてはギャンブルをしないことが危険な状態になりうる。
真の起業家とは「ギャンブルの本質を理解していて、ギャンブルをする人」である。
これを著者は真のギャンブラーだと言っている。
ギャンブルをきちんとしようとすれば、実は合理的に考える必要がある。
そして、組織においてギャンブル的なチャレンジをしなくなると
危険な状態にもなりうる。
感情的なことや思い込みを排除して合理的に考え、
その上で思い切った行動をする人が道を切り開いていく。
そうすることで自信につながるかもしれない。
本日の武器「合理的に考えて、ギャンブル的な行動をとる」