自立した人が自分を後回しにする 「抜く技術 (上原春男)」
アメリカ型の市場万能主義は、いわばナイフとフォーク文化の産物といえる。
つまり、突き刺しては切り刻む力任せの押す文化だ。
自己アピールや自己主張ができないとダメで、
チームワークよりも個人の成果がものを言う。
しかし日本はもともと箸の文化だ。
ほぐしてつまむ、「やわらかい」精神、引く文化である。
だからこそ、組織の和を大事にして、上から言われたことを忠実にこなすのを
よしとする反面、自主性に乏しいという欠点があった。
アメリカ型の成果主義が見直され、日本型へ回帰する動きもある。
アメリカ型、日本型、どちらも一長一短がある。
これはどちらが正しくて、どちらを選ぶべきかという問題ではない。
これから求められる人材は2つの性質を併せ持って、
そのどちらにも偏らないバランス型の人材であると著者はいう。
つまり、個人は仕事を組織からやらされるのではなく、
みずから自主性をもって自発的にやっていく。
もちろんそのためには、「個」として自立できる力、組織のバックアップがなくても
個人として押していける力を備えていかなくてはならない。
そして、組織から見れば、個人が力をつけ、
それを発揮できる環境を作らなければならない。
個人に仕事をやらせるのではなく、自主的にやってもらう環境がポイントである。
そのうえで個人は、俺が俺が、と自己主張するばかりでなく、
組織としてのチームワークを大切にする。
組織ベッタリでもなく、われ先の個人主義の塊でもない。
個人としての自主的な力と、組織として和す力、その2つの力を使い分けられる人材がこれから求められる、と著者は言う。
私としては、アメリカの成果主義が個人に偏りすぎて
チームワークが足りない、という点は詳しくは知らない。
ただ、組織がなくてもやっていける人たちが、組織でチームワークを発揮するのであれ
ば、最も効果的な組織になるのではないか、と思う。
組織にいる以上はチームワークを発揮する。
そのうえで、自分は組織がなくてもやっていける力を身につける。
そうすることで自信につながるかもしれない。
本日の武器「組織の外でも十分やれる力をつけた上で、チームワークを発揮する」