どこまで準備するべきか 「意思決定力 (本田直之)」
自動車教習所でずっと練習しているだけで、車に乗れるようになるだろうか。
信号、カーブ、横断歩道など、極力リアルに再現された「道路」の上を
実際に運転してはいるが、教習所では突発的な事故は起こらない。
突然子供が乗った自転車が飛び出してきたり、バイクがすれすれを走ったり、
不意に追突されたり、といったトラブルがない。
仮免をとるまでは、あくまで実際の道路上のシミュレーションにすぎない。
実際に道路で運転してみないことには、車を運転できるようにならない。
「人が飛び出してくるかもしれないから、右折のときは注意しましょう」という
DVDを何回も繰り返し眺めるより、一般道を運転したほうが手っ取り早く掴める。
実際に運転することで、経験が得られて改善点も見つかる。
意思決定も同じで、シミュレーションや準備を入念にするのは必要だが、
それに時間をかけすぎたり、実行に移さなかったりすれば、
教習所でずっと練習しているのと同じことになる。
一つ間違ったら永遠に取り返しのつかない意思決定など、めったにない。
また、100%絶対に正しい意思決定も存在しない。
だからこそある程度準備をしたら実行しなければならない。
どこまで準備して、どの時点で実行に移すべきか。
著者はこのように表現する。
「見込み6割で意思決定し、残りの4割は行動しながらカバーする」
逆に言うと、残りの4割をどのようにカバーするかが鍵になる。
手術中にドクタ-に求められるのは、100%の正解ではないそうだ。
どんな手術でも数%の確率ではあるが不足の事態は起こる。
「あれ?こんなはずではない」というアクシデントに、いかに対処していくか。
その応用力こそが医者の実力である。
想定内のときにシミュレーション通りの手術ができる医者はたくさんいる。
想定外のことが起きたときに落ち着いて対処できるのが名医である。
意思決定も、どんなにシミュレーションしても想定外のことは起こるという前提で、
見込み6割まで準備できたらさっさと実行してやりながら修正するほうがいい。
その6割の準備が成功を決定するとも言えるし、
実行してみて4割修正したとしても、それは想定内のことで準備不足にはならない。
4割はやりながら修正する前提のほうが実行しやすいだろう。
「6割は進めのサイン」と決めておけば、意思決定をぐずぐず引き伸ばすことはない。
何かにつまずいても「4割修正することは想定内」としておけば慌てることはない。
意思決定したことが不正解であっても、そこから正解に近づけていけばいい。
そうすることで自信につながるかもしれない。
本日の武器「6割は進め。4割は修正する」