百武日記

自信がない人が自信を持って生きるためにはどうすればよいか。日々考えたこと、学んだことを記録し、自分の武器にする。

脳は利他的にふるまいたがる 「他助論 (清水克衛)」

「他助論 (清水克衛)」の中で紹介されている本の中に

「切符売り場で困っている人を、私たちはなぜ助けたり、助けなかったりするのだろう

か」という問題提起がある。

それを読み解くキーワードの一つは「報酬」である。

この本の中では、人間の行動を決定づける要因として、報酬を挙げている。

人は報酬を最大化するにはどうすればいいか考えるときに、

脳の中のドーパミング神経が活性化する。

だが、報酬系の脳細胞は他の動物にもある。人間と動物の違いは何だろうか。

人間には「共感力」があるのだ。

 

人は映画やドラマなどに、架空の話だとわかっていても感動する。

他者の感情を、あたかも自分の感情であるかのように感じ、相手の感情を理解する。

これは、他の動物にはない、人間独自の脳の働きである。

人間の行動を決める要因に「報酬」がある。

そして人間は他人の感情に共感する能力がある。

では、改めて「切符売り場で困っている人を、私たちはなぜ助けたり、助けなかったり

するのだろうか」という問題を考えてみる。

 

「切符売り場で困っている人を助けない」という行動から得られる報酬を考えてみる。

まず、助けるという労力と、それにかかる時間を使わなくてすむ。

もし、急いでいて待ち合わせの時間に遅れそうな人だとすれば、

「待ち合わせに遅れなくてすむ」という報酬になる。

 

では、「切符売り場で困っている人を助ける」という行動から得られる報酬は何か。

「困っている人を助けるのは当たり前」という自分の信念を貫けた喜びかもしれない。

また、「ありがとう」と人に感謝されて嬉しい、というのも報酬と言える。

何よりも困っている人に「共感」し、助けてあげることができて嬉しいとも感じる。

人間には共感力があるので、人の気持ちがわかる。

だから他人が困っているということもわかるし、

他人の喜びに共感して自分も嬉しくなる。これが人間の脳の特徴なのだ。

 

人に親切にするとセロトニンオキシトシンといった脳内物質が放出さられる。

これにより、人間の心と体に良い影響が出てくる。

ストレスが消える、幸福感が得られる、血圧の上昇を抑える、

心臓の機能がよくなる、長寿になる、といった効果が出るのだ。

オキシトシンは他者とのふれあいによって分泌される。

身体的なふれあいだけでなく、心のふれあいによっても分泌される。

科学的にも、親切が心と体にいいことが証明されている。

 

脳の仕組みからいうと、「幸せになる方法」は2つある。

一つは「目標達成」や「夢の実現」によって得られる幸せで、

これにはドーパミンという神経物質が関係している。

試験に合格したときや、試合に勝ったときなどは、

このドーパミンが分泌され、舞い上がるような高揚感がもたらされる。

もう一つは、「親切」や「ふれあい」によって得られる幸せである。

これはオキシトシンの働きによるもので、心に灯がともるような、

ほんのりと長続きする幸せである。

 

私たちはドーパミン的な幸せばかりを優先してきたのではないか、と著者は言う。

ドーパミン的な幸せは得られた時の快感は大きいが、長続きしない。

成功を手に入れたとしても、「もっともっと」と次の報酬を求め、

再現なくエスカレートしてしまう。

また、成果を求める過程において、他人との競争が生じることが多い。

努力しても思うように結果がでないときは、真面目な人ほど自分を責めてしまい、

それが大きなストレスになってしまう。

一方で親切やふれあいから生じる幸せ感は、強烈なものではないが、

ほんのりと長続きする。成果とも無縁で、他人との競争もない。

 

ドーパミン的な幸せは、社会で生きていくには必要なものだと私は思う。

だが、ドーパミン的な幸せ「だけ」に偏ると行き詰まるかもしれない。

ドーパミン的な幸せを求めると同時に、オキシトシン的な幸せも求めていく。

そうすることで自信にもつながるかもしれない。

 

本日の武器「目標達成とは別に、人に親切することも欠かさない」