「正論ですが、現実問題として・・」に逃げない 「他助論 (清水克衛)」
「天は自ら助くるものを助く」
これはサミュエル・スマイルズの名著「自助論」の一説である。
他人の力に頼らず、自主自立で自分の人生を切り開く。
1858年に出版され、今も読み継がれる作品である。
そして「他助論(清水克衛)」では、
これからの時代を支える考え方は「他助の精神」であると説く。
その考え方は、「天は他人を助くるものを助く」というもの。
つまり、自分の利益だけを優先するのではなく、他人を助け、
他人に喜んでもらえることを第一に考えて行動することである。
このように言うと「自分を犠牲にして他人を助けろということですか?」と
言う人もいるが、決してそうではない。
他助の精神とは自己犠牲を前提にするものではなく、
他人が喜んでくれる方向性を、自分が生かされる方向性と合わせることである。
こんな話をすると「Win-Winの関係ですね」と言う人もいるが、これも厳密には違う。
Win-Winだと「自分を勝たせてくれたら、あなたも勝たせてあげますよ」とか、
「あなたを勝たせてあげますから、私も勝たせてください」といった意味で使われる。
つまり、自分が勝つことが前提となっている。
他助の精神とは、自己犠牲でもWin-Winでもない。
何かの見返りを期待して行動するのではなく、
他人を助けることそのものに喜びを感じる。
これが他助の精神だ。
そしてこれはボランティア精神とも少し違う。
ボランティアは無償を前提にしているが、
他助の精神は必ずしも無償を前提としない。
それは近江商人の「三方よし」という考え方が近い。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という理念は、
売り手だけが儲かるのでもなく、買い手だけが得するというものでもない。
商売の当事者はもちろんのこと、
社会全体の幸福につながる商売をせよ、というのが三方よしである。
商売やっていない人でも、「世のため、人のため、自分のため」になることをすれば、
三方よしになるだろう。
自分を犠牲にもせず、見返りを求めず、
自分も相手も世の中も良くなることをする。
「これは理想論だ」と反論する人もいるかもしれない。
そこで私が思い出すのが、ルマガで読んだ「正論の話」だ。
「それは正論ですが、現実問題として・・」という言い訳がある。
こう言われた時の正しい答えは、「正論に沿う」というものだ。
「現実問題として・・」の現実問題とは、「現状維持」にすぎない。
危機的状況を打開したい時に、現状維持を選んでは危ない。
船が沈没しているときに「現実問題として僕泳げないんですよ」と
言ってる場合ではないのだ。
正論とは文字通り「正しい論」だから、正しい方を選べばいい。
ここで重要なのは、正論に「沿う」ということだ。
沿うということは、必ずしも正論通りの行動をそのまま取るわけではない。
車椅子のお客さんにとって階段がきついので、スロープをつけるとする。
「正論ですが現実問題として費用がかかるし、スロープを設置するスペースもない」と
反論すると、答えは現状維持にしかならない。
しかし、ここで言ってる正論とはスロープをつけることではない。
「車椅子やベビーカーのお客様がお困りなので、困らないようにしてあげるべきだ」
これが正論であり、その正論に沿った手段の一つがスロープをつけることである。
スロープはないが、車椅子を見つけたらスタッフは必ず2人以上で駆けつけるとか、
特別に搬入口からの案内をするとか、正論に沿った手段はいくらでもある。
大事なのは「正論を実現するために今できることをする」ということだ。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という、三方よしの理念。
見返りを求めずに、自分を犠牲にせずに他者を助ける、他助の精神。
それは正論だ、理想だと片付けてしまうよりも
正論だからこそ、なるべくそれに沿えるように今できることをする。
そうすることで自信につながるかもしれない。
本日の武器「自分のできることから見返りも求めず、自己犠牲もせずに他者を助ける」